これまで、着物着用の健康影響について述べてきましたが、では果たして着物を着用している人たちが健康なのかどうか、これがわかれば、「きものは健康に良いのかどうか」を検証することができます。
これには、統計学的手法という研究方法を用いました。きもの常用者集団に対して質問紙調査 (無記名直接配布回収法)をおこない、その結果を直近の国民栄養調査結果と比較するという手法です。きもの乗用者集団としては、市田ひろみさんが会長をしておられる「日本和装師会」総会に参加した会員240名のみなさまに協力をお願いしました。
年齢は50台がもっとも多く、ついで60台とやや高齢で、1年間のきもの着用日数は、100日以上の人が55人と2割を超えていました。
さて健康状態ですが、国民栄養調査ではまず体格をBMIで調査していますので、それにならってBMIを調べました。BMIとは、身長と体重から算出される指標で、女性の理想的体格はBMI25以下とされています。比較したところ、きもの着用者では、70歳未満でいずれもBMIは低く、とくに40歳代と60歳代ではBMIが有意に低いとの結果でした。つまり、きものを着ている人には肥満は少ないという結果でした。
次に疾患の有無です。国民栄養調査では疾患の有無を知る質問として「以下の薬を内服していますか」との質問が設けられていますので、今回の調査も同様の質問としました。その結果、有意差が見られたのは「血圧を下げる薬」「インスリンや血糖値を下げる薬」「コレステロールを下げる薬」で、さらに「貧血の薬」「睡眠薬」の項目でもきもの着用者のほうが内服している人が少ないという結果でした。
生活習慣については、「朝食を食べる」「喫煙しない」に加えて、「1回30分以上の運動を週3日以上おこなっている」という運動習慣の点でもきもの着用者でよいという結果が出ました。着物を着用している人たちは、健康にも気くばりをして、長く健康で着物を着続けることができるようにしているともいえましょう。
今回の結果は、市田ひろみ先生が会長をつとめる「日本和装師会」のみなさまのデータですので、これをすぐに全国のきもの着用者に広げて考えることはできません。しかしながら、日本和装師会のみなさまが、日ごろから市田ひろみ会長にならって、高い理念でもって健康的な生活を送るべく邁進しておられることはすばらしいことです。きものを着用することを教え広める立場におられる日本和装師会のみなさまですので、なおのこと心丈夫に感じたことを付け加えさせていただきます。