私が住んでいる京都には、祇園祭という夏のお祭りがあります。この時期には京都の町が浴衣姿であふれます。でも実はこのゆかた姿、見た目の涼しそうな様相とちがって実は暑いと感じる人は多く、なかには熱中症で運ばれる人もいるのですから要注意です。
ゆかたが涼しいのか暑いのかを次に検証しました。使用した方法は、深部体温(いわゆる脇の下で計る体温)と発汗量です。
結論を言いましょう。ゆかたは衣文をしっかり抜かないと危険です。衣文を抜かない着方をした場合には、衣文を抜いた着方に比べて発汗量は2倍以上、そして体温は37度以上に達します。(気温30度での実験)これでは熱中症に直結してしまいます。
日ごろから着物を着ている人たちに、夏の暑さ対策としておこなっていることを尋ねた調査では、「汗取り下着」の着用と「ゆったり着用する(衣文を大きく抜く)」ことがもっとも多く上げられました。
では、汗取り下着はどうなのか?汗取り下着も種類によっては発汗量が増えるうえに衣服内湿度(じめじめ感)が増してしまうものもありますので注意して選んでください。
ちなみに、このゆかたの検証は、衣文をぬく・抜かない、汗取り下着の種類を変えるなどいろいろな条件でおこないましたが、着衣快適性からはすべてが「不快」から「まったく不快」のゾーンに入っていました。前述した快適と感じられる着衣の指標であるクロ値からは、気温30度以上は快適なのは「裸」だとされています。要するに、洋装であれ着物であれ、高温多湿の日本の夏の環境下では、着ていること自体が不快であるということは避けがたいことです。
ですからこそ、夏場の和服着装にはさまざまな工夫が必要です。なかでも衣文を抜くことの効果は大きく、着付け方法における伝統的工夫の重要性を再確認する結果でしたが、日常的に着物を着用している人たちの工夫の中に「補正など下着を減らす・つけない」としていることも着目に値します。そもそもゆかたは、夏の暑い時期に湯上りに着用するもので、肌に直接つけるものとして発展したものですから、補正や汗取り下着をつけずにさらりと着用するのも、健康的なおしゃれのひとつかもしれません。